いやはや、ビールを飲み始めて25年。人生で2番目にウマいビールを飲みましたよ。飲んだ場所はバンコクから北に電車で1時間10分ほど行った場所にある「Chinang Rak」という駅の近く。さて、ここでは、Chiang Rak(チアンラック)について解説してみますね。みたいなクソ情報サイトみたいな書き出しをしたが、何しろこの駅についての情報がまったくねぇ!! 「チアンラック」と検索したらオレのブログがトップに来る日が到来するってのもそりゃそれで面白いのでチアンラックについて書いてみるぞ。いや、本当はビールの話だからな。
で、このChiang Rak、元々は行くつもりなど毛頭なかったんですよ。アユタヤに行ってサイクリングでもすっかー、とばかりにタイの国鉄に15バーツ(約50円)を支払い、3等車の切符を買ったところ、まったく電車が発車しない。結局25分後に電車は発車したのですが、その後もチンタラチンタラ進んでいく。本来12時55分発、14時31分アユタヤ着の予定だったのですが、Chiang Rak(チアンラック)で電車は完全に止まってしまいました。
大勢の人が外に出てタバコを吸ったり色々しているのですが、まぁ、車両トラブルか何かでしょう。ポンコツ電車が「もう動けねぇよぉ!」みたいなことになってしまったのではないでしょうか。何せ、この電車を抜いていく新しい列車もあったぐらいですからね。車内で20分ほど星新一『夜のかくれんぼ』なんかを読んでいたのですが、この時すでに15時15分。仮にこの電車の乗客を救済すべく後発の列車がこの駅に止まってくれたとしても、その列車は大混雑が容易に想像できるうえに、アユタヤに着くのが間違いなく16時30分を過ぎてしまうことでしょう。


となれば、もはやアユタヤの寺院を観光する時間などない。ならばここでバンコクに引き返すという判断をするのは至極合理的です。そこで私も列車を降り、「まぁ、近くに飲み屋ぐらいあるだろ、うふっ」みたいな感覚で降り、帰りの列車のチケットを購入しました。16時43分発で18時にバンコクに着く列車の券を取れました。つーか、なんで距離がバンコク・アユタヤ間よりも短いのになんで20バーツ(約69円)なんだよ。
それはさておき、ですが、軽い気持ちで歩き始めたらこりゃ、完全に何もない場所じゃないですか。道路はあるものの、馬がいたり蟻塚みたいなものがあったりする。そこら辺をオババが歩いていたので「この辺に何か飲める場所はあるか?」と英語で言い、「缶ジュースを飲む」ゼスチャーをするもまったく通じず妙な愛想笑いをされて意思疎通は不可。こちらも愛想笑いを浮かべて「コップンクラッ!」と感謝し、その場を去る。
さぁ、このまま進むか、或いはもう諦めて駅に戻り、体力の温存を図るか……。そうした二択に迫られたのですが、我々は進軍を決意! 戻ってもビールは飲めねぇ。だったらビールを求めるには進軍あるのみ!! ここまで12分、まだ15時27分であるっ! 電車までは1時間16分もある! ということで、もう少し歩くことに。するとそれから8分後、売店風のモノが見えてくるではないか!
まさに「砂漠にオアシス」の如きこの店、人の好さそうな太ったおっちゃんが「入れ、入れ」と招き入れてくれる。しかも、巨大冷蔵庫にはジュースにヤクルトにビールがあるではないか! 小生、すぐにLEOビールの大瓶を購入し、同行者のためにはLEOビールの缶を購入。さらにはポテトチップスを購入するとともに、グラスには氷を入れるように頼んだ。いくらかよく分からなかったので、とりあえず100バーツ札(340円)を出したが、足りないという。20バーツを足したら5バーツのお釣りが来た。
合計115バーツだが、恐らく、LEO(大瓶)=60バーツ、LEO(缶)40バーツ、ポテトチップス(10バーツ)、氷(5バーツ)といったところだろう。
実はオレはこの時、LEOの大瓶には300バーツ(1020円)を払ってもいいとさえ思っていたのだ。喉がカラカラだっただけに、もう金額はいくらでも良かった。そんな状況でキンキンに冷えたビールを氷の入ったグラスに入れる時の嬉しさったら。オッサンは、店の外側にあるバナナの皮むきをやると思われる場所のベンチを指さし、「そこで飲んでいいかんな」と指示をしてくれた。
同行者と乾杯をし、「いざゆかん」とばかりにグラスの縁に口をつけ、最初に入ってきたビールの爽快感ったら! まさにこれぞ「甘露」ともいうべき魂の水分の雫であり、さらにはアルコールのもたらす高揚感と陶酔感が一気に我がボディーに入ってくる。まさにQueenが『Play the game』で歌ったところの「My love is pumping through my veins」であるっ! オレはこの1本を大切に飲み、同行者とともにもう1本ずつ追加し、至福の50分ほどの時間を過ごしたのである。

電車が遅れる、目的地であるアユタヤには行けない、初めて来た土地で暑い中彷徨い続ける……。それがあったうえで、外国人など一切来ないであろう商店のオッサンからは親切にビールを出してもらえた。
この時のビールはまさに人生2番目にウマいビールであるっ! となれば、トップ3が何かが気になるところであろう。3位は、2002年2月、酒が禁止されているイスラムの国・アフガニスタンに取材に行った時である。2週間の取材期間、まったくビールを飲めなかったのだが、ホテルにいたスウェーデン人から「チキン・ストリートとかいう場所に闇ビールを売ってるらしいぜ」ということを聞いた。
この時、同行のカメラマンとともにチキン・ストリートに行き、1本10ドルという破格のカネを払ってロシアの闇ビール2本を買ったがこれがウマかった。恐らく通常モードで飲んだら椎名誠氏が言うところの「(ロシアのビールは)馬のションベンビール」なのかもしれないが、オレとカメラマン氏にとってはこんなにウマいビールがあるのか! というほどだった。
そして、史上最高のビールは1994年7月、オレが大学で入っていた「山友会」という登山サークルの夏合宿の時に飲んだビールである。信濃大町から餓鬼岳を経て燕岳、大天井岳という地獄の悶絶ウッ、ゲホッ、あべしっ! ひでぶっ! 的超絶クソうんこ食ってろ難関コースを経てついに槍ヶ岳山荘へ! 翌日、槍ヶ岳に登るぞ! という時に、3年生の先輩(オレは2年生)が2パーティの8人全員にキンキンに冷えたアサヒスーパードライの350ml缶を買ってくれ、それを8人で飲んだのだ。
それまでビールなんてもんは単なる苦いヘンな飲み物、ダイエットコークの方がうまいだろ、酒にしてもカルピスサワーの方がうまいだろ、オラ、と思っていたオレの概念を完全にぶち壊してくれたのであった。
結局、トップ3のビールシチュエーションの共通点については若干の「極限状態」である。こうした経験があるだけに、オレは「ビールってもんは状況によりウマくなるんだな」と思うのである。だからこそ、どーでもいいクソ上司と飲むビールはマズいのである。
そういうわけで、Chiang Rakについて続報がありましたらまた報告しますね!(とバカクソ情報サイト風に締めてみたぞ、ウヒヒ)