さて、そろそろコロナについて、一旦キチンと「テキトーな方々」について言及しなければならないだろう。日本社会に対してこの1年8ヶ月近く、多大なる影響を及ぼしてきた「感染症の専門家」の皆様について検証しなくてはなるまい。2020年1月に日本で第一号の陽性者が出て、以来、日本は完全にこのウイルスにビビりまくった。以下写真はTBS『Nスタ』9月21日より。

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諸外国と比べても格段に少ない陽性者数と死者数でも、4月の第一回緊急事態宣言が開始。2021年に入り、東京では9ヶ月間で28日しか緊急事態宣言ないしはまん延防止等重点措置が発令されていない日数はなかった。

常に専門家の皆さまはテレビに出て、「気を緩めるな」「今だけは我慢を」と呼びかけるとともに「今のニューヨーク(ミラノ・インド)は2週間後の東京」や「人流が悪い」「酒が悪い」「会食が悪い」「若者が高齢者にうつしている」「新学期が始まると学校がクラスターになる」などと分析をしたり預言をしたりしていた。

もちろん、2020年の夏ぐらいまでは本当にCOVID-19は「未知のウイルス」と扱われていたが、秋以降は「そこまでビビる必要があるウイルスではないのでは?」ということは少なくとも日本では明らかになっていたのではないか。しかし、専門家は連日テレビに登場し、愚民どもの気の緩みを批判し続け、コロナを壊滅するための仮説的なものを提示したり、拡大の理由を分析をし続けた。

そして、東京オリンピック、フジロック、ヒップホップ系音楽フェスのNAMIMONOGATARIは「人流を増やす」ということで、陽性者を激増させ、死者がバタバタになるかのように批判されまくった。結果的に東京五輪・パラリンピックは無観客になり、フジロックとNAMIMONOGATARIは猛烈な批判に晒された。

◆「人流が悪い」設定を戻せない専門家たち

しかし、これらのイベントが開催された後、日本各地の実行再生産数は減少に転じ、その流れで9月末の陽性者激減、という状態になっているのだ。「殺人イベント」でもなんでもなかった。さんざん「人流が悪い」と言い続けた専門家が今は「泥船から逃げろ!」とばかりにメディア露出を減らしたり、前言撤回を始めている。或いは、自らの過去発言が当たっていなかったことから狼狽する様子も伺える。とくに二木芳人氏はそうである。9月27日に出演した『めざまし8』(フジテレビ系)で「人流と感染が必ずしも相関しないことは以前から申し上げていた」と述べたが、同氏は散々人流について述べていた

これから、少しずつ私は意地悪く「専門家」を叩いていこうと考えているが、今回は松本哲哉氏である。同氏の発言について私は9月23日発売の「週刊新潮」で、同氏がテレビに出た際のネットニュースの見出しをこう紹介した。なお、同氏については、以下のように新潮では説明している。

〈テレビ出演上半期2位の専門家(156回・昨年は232回で専門家中4位)である松本哲哉・国際医療福祉大学教授〉

そして、同氏が関与するネットニュースは以下の通り。

〈感染症専門家 東京のコロナ新規感染者は7日連続前週下回っても「まだ1カ月厳しい」〉(デイリー・8月30日 ※ネタ元は『羽鳥慎一モーニングショー』)
〈コロナ感染者減少傾向も専門家は警鐘「人流減っておらず実態反映していない可能性」〉(FNNオンライン・9月7日)
〈関口宏 感染者「東京都は減っているがいいんですか」識者「不自然な減り方」サンモニ〉(デイリー・9月12日 ※同『サンデーモーニング』)
〈専門家「冬より前に第6波の可能性」 感染減で緊急事態宣言解除なら〉(FNNオンライン・9月14日)

2021年9月、同氏の発言は「 」内に記されているが、全然当たっていない。4つ目の「第6波」は素人にも分かるもの。特にひどいのが2つ目と3つ目だ。「実態反映していない」「不自然な減り方」というこの2つの発言は、自身が過去に発言した通りになっていないから、「オレは悪くない! 何かがおかしいんだ!」と言い訳をしているだけだ

そして、同氏の慌てぶりは、9月21日、JNN(TBS系)のニュースでも表れた。「なぜ東京の陽性者は減少しているのか? 専門家3つのポイント指摘」というコーナーを約7分間にわたって展開したがこの登場シーンである。番組では、8月13日が過去最多の5773人だったが、9月21日が253人にまで減ったことについて言及。

厚労省アドバイザリーボードの脇田隆字座長は、陽性者減少の要因を「7月の連休などで増えた人流が減少 長雨の影響で外出が減少→『人流抑制』」「感染者増加・医療ひっ迫の情報などで『行動変容』が起きた」「『ワクチン接種』が現役世代を含めて進んだ」と説明。

8月16日が発症のピークで3464人、となっており、感染のピークは8月11日頃と見られている、となり、感染のピーク後に何があったかを示した。

【要因1】として、13日~16日にレストラン・カフェ・映画館などの人流データが減少した、と述べた。このグラフは、いつと比較したのかが示されていないのだが、示されたグラフを見ると、8月上旬はマイナス13%ほどだったものが8月10日ぐらいにマイナス8%になり(つまり、「気が緩んだ」)、その後10%台後半で推移(つまり、「頑張った」)している。グラフを見ると確かに「頑張った」であり(別に頑張ってねぇよ。皆、テキトーにやっとるわ)、このデータだけを見ると人流は減っている。ただ、陽性者数の激減率とこのグラフの減少率は相関性はない。あと、お盆に渋滞は発生したわけで、帰省をする人が多かったらレストラン・カフェ・映画館などの人流は減ると思うのだが……。何しろ、実家でメシを食うのだから。(※下記画像、同日の『Nスタ』より)

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【要因2】
については「東京の陽性者5000人超」という報道を見て「行動変容が起きた可能性」と述べている。私はこの時期東京にいたが、相変わらず人は多く、メディアや専門家が言うところの「緩んだ状況」だったと感じられた。一方、脇田氏は、外出を控える、外出した先での感染対策をキチンとしたのでは、といった分析をしていた。

【要因3】については、8月11日のワクチン2回接種率が約35.5%だったのが9月21日には約54.4%になったことを紹介。いやいや、ワクチン2回打っても青森や千葉の高齢者関連施設や医療施設ではクラスター出ているでしょうに。ワクチンの感染予防効果については疑問符も出ているのでは? そもそも、ワクチンを2回打ちまくったイスラエルやイギリスでも感染爆発(ただし、死者は減少)したではありませんか。

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脇田座長のこの説明も、これまで同氏が主張してきたことを正当化するものでしかなく、古臭い。いい加減に過ちを認め、仮説が正しくなかったことを認めて下さい。そしてここから同番組には、いよい松本氏が登場し、「専門家様」としての意見を述べる。同氏の発言を書き起こす。ホラン千秋キャスターから「様々な要因が重なって減少に転じたと思うんですけど、松本さんはこのスピードで新規陽性者が減ったことの背景をどうお考えですか?」とまず振られた。

「ワクチン接種ももちろんかなりある程度のところにいきましたけど、急激に減りましたよね。これはやっぱり、多くの人がこのタイミングで感染すると自宅療養になる、場合によっては悪化しても入院できなくなる、と自覚し、危機感を持って多くの人が行動変容起こったと考えられます。そういう意味では、人の行動が、多くの人が努力することによって、感染者数が減ることに繋がったと思います」

ここではやはり「人流」が抑制されたことと、「危機感」及び「根性論」により陽性者が減った、というのが松本氏の分析である。ホランはこう質問を続ける「3連休で出かけた人、多いと思います。これから2週間後は増えている可能性もないわけではないでしょうか?」。松本氏はこう答えた。

「これで安心はできないですよね。そこそこいいところまで来ましたが、逆にいえばこれでこれで大丈夫なんだ、と意識が変わってしまえば出かけようとか、これまで我慢していたけど、集まって食事をしよう、とかリスクの高い行動をとられるようになると、この後上昇に転じることは十分ある」

とにかく、いくら下がろうが「気が緩めばまたヤバい」と言っているのだ。さて、2週間後である10月5日、同氏はその日の数字を見て何を言うか?

専門家は陽性者が増えたら「これからヤバくなる」と言い続け、減ったら「リバウンドが恐ろしいから気を緩めてはならない」と言い続けた。松本氏はこのコロナ騒動が始まった初期の頃から論調を変えていないのである。

そしてやはり問題視すべきは前出「不自然な減り方」の一言である。完全に自分の仮説が正しい、という前提に立ち、実際のデータにこそ瑕疵がある、という主張だ。いい加減にデータを見るべき時期なのではないか。


そして、最近はメディアの報道も陽性者数に一喜一憂するのはいかがなものか? と指摘し、良識派になりつつあるTBSの井上貴博アナはこう質問した。

「検査陽性者の波は必ず来ます。レストラン・カフェ・映画館などの人流データがありますが、ここに重きを置くなら、施設内の人数制限を行なうべきで、人流が悪で、アルコールが悪という考えを変えなくてはいけない。医療体制を充実することが必要な中、受け入れられない状態にある」

松本氏はこう答えた。

「色々なことが分かっていた。ベッドを増やせばそれでいいわけではない。人を増やさなくてはいけないし、他の病気を見なくてはいけない。バランスを見なくてはいけない。陽性者が増えても連携をしなくてはならない。これから波が出るまで時間がある。ここで真剣に議論しても、増え始めてから議論しても仕方がない。今すぐ着手すべき」


井上アナは5歳から11歳のワクチン接種について「重症化率が低い、副反応の重きを置く親御さんも多い」と松本氏に質問。松本氏はこう答えた。

「ようやく5歳から11歳のデータが出た。この人たちに摂取できる可能性が出てきた。お子さんは判断できないが、親が判断。今打つべきは親の世代。その人たちがしっかり打ち、子供さんにうつさないことが大事。持病を持っているお子さんは優先的に打つべき」


元々ワクチンについては「ハイリスク層が重症化しないため」というのが最大の接種目的だった。しかし、松本氏が今回述べたのは「うつさないための接種」になっているのだ。

このニュースに出ている松本氏については、正直私は「詰んだな」と見た。もはや、自分の立場を守り、「未知のウイルスだったから私の言っていることが当たらなかったのも仕方ない…」と開き直っているように見えた。というか、脅えている。

こうして「専門家」の皆様の発言はこれから昨年に遡って検証しなければならないだろう。あまりにも日本にこの人々は過大なるストレスと犠牲をもたらした。テレビというものが最大の影響力を与える装置なわけで、そこで連日恐怖を煽り続けた彼らの責任、いつか取らせる必要がある。第一弾のターゲットは松本哲哉氏にした。松本氏、これまでの発言について貴殿は責任を持ってくださいね。