あー、仕事したくねぇ、みたいなモードになると途端に余計なことを考え始めるのですが、突然やりたくなった仕事があります。それは昔話を現代の風潮に合わせて書き直す仕事です。おい、文科省とか出版社の皆さん、オレにそんな仕事をください。2025年、もしも『桃太郎』を時代に合わせて書き直したらどうなるか、をやってみました。

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 昔々、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。おじいさんとおばあさんは一緒に柴刈りに行き、その後は仲良く村人共用の洗濯場で洗濯をしていました。すると、洗濯場の用水路の上流から大きな桃がどんぶらこ、どんぶらこと流れてくるではありませんか。

 おじいさんはその桃が誰かが今晩食べようと楽しみにしていたものかと心配になり、とりあえず顔が広い村長さんの自宅に行き、この大きな桃に心当たりがないかを聞いてみました。

「う~ん、心当たりはないなぁ。でも、確かにこんな立派な桃を食べられないと困るかもしれないねぇ。私の方で回覧板を村に回してみよう。発見した時の状況を教えてもらえますか。あと、桃の絵を描いておこう。明日中には村の全戸にまわしておくから、それまでは私が保管しておきましょう」

「村長さん、ありがとうございます」

 こうして翌日、村の全員が回覧板を受け、誰も心当たりがないことがわかったため、おじいさんとおばあさんは村長さんと一緒に村の代官さんの元へ行き、この桃をおじいさんとおばあさんがもらえるかを確認しました。

「村の誰も心当たりがないのであれば、もうおじいさんとおばあさんの所有物ということでいいのではないか」

 こう正式に判断されたため、おじいさんとおばあさんは家に桃を持ち帰りました。その晩、野菜と肉のバランスの取れた食事をした後、食後の甘い物に桃を食べようと包丁で割ってみると、なんとそこから小さな男の子と女の子が出てくるではありませんか。

 おじいさんとおばあさんはびっくりするのなんの。しかし、その愛らしさから「桃太郎」「桃子」と名付け、親代わりに育てようかと考えます。しかし、勝手に子供を育てるのもいけないことだと考え、前日同様に村長さんのところへ行き、また回覧板を回してもらい、さらに翌日、代官さんのところへ行き、採決を下してもらいました。

「この子達は身寄りのない子でしょう。おじいさんとおばあさんが中心となり、この村皆ですくすくと育てましょう。私の方で戸籍は新たに作っておきますね」

 かくしておじいさんとおばあさんは桃太郎と桃子を家に連れて帰り、それから4人での生活が開始しました。2人は村人の助けもあり、すくすくと成長し、正義の心を抱く立派な子どもに育ちました。そんな中、桃太郎と桃子は「鬼ヶ島」の鬼が人々に乱暴をし、金銀財宝を奪っていることを知ります。

「絶対に許すことができない!」

 桃子のこの発言に桃太郎も「うん、僕もそうだ!」と同意し、二人は鬼ヶ島に鬼退治に行くことになりました。村人からは餞別にお団子と茹でた野菜をたくさんもらい、歩きはじめます。

 しばらく行くと2人は声を掛けられました。そこには犬、サル、キジがいます。

「僕たちを仲間にしてください!」
「私も一緒に鬼を退治したいです!」
「ワシも一緒に退治するゾイ」

 こうして心強い仲間が3匹増え、一行は仲良くお団子と茹で野菜を食べながら鬼ヶ島に向かいます。鬼ヶ島に向かう前は村の役場へ行き、鬼ヶ島全体が私有地かどうかを確認しました。すると、鬼の屋敷のみ私有地で、あとは藩(現在の「県」のようなもの)が管理していることが分かりました。

「こういう確認作業が大事なんだよ」
「勝手に人の財産に入ってはいけないからね」

 こうして船で渡り、鬼ヶ島に上陸したところで後は鬼の屋敷を目指します。呼び鈴があったため、呼び鈴をカラカラと鳴らします。すると紫色の鬼が出てきました。

「何の用だい?」
「私達はあなたたちの乱暴をやめさせるためにやってきました」
「なんだって? ちょっと仲間を呼んでくるぜ」

 そこにやってきたのは、赤鬼、だいだい色鬼、黄鬼、青鬼、水色鬼、緑鬼です。鬼は全部で7人。この7人が散々悪さをしていたようです。

「僕たちと一度話し合おう。キミたちがやっていることはよくないことだ!」
「ハハハハハハ、多数決でやろうってことか。オレたちは7人いて、お前たちは5人しかいない。多数決になったら不利だと分かってて来るとはとんだばかものだな、ハハハハ!」
「私たちはあなたたちを改心させますよ!」

 こうして、桃太郎と桃子、犬、サル、キジは不利な闘いに突入しました。5人は鬼の屋敷に入る許可をもらい、いざ敵陣へ。屋敷の中にはところどころに盗んだ金銀財宝が積み重なっており、目もくらむばかりです。

 こうして会談が開始しました。桃太郎と桃子たちはいかに村人が苦しんでいるかを力説します。最初はヘラヘラと笑っていた鬼たちですが、桃子の次の一言で場の空気が変わりました。

「あなたたちに盗まれた金銀を、夢だった畑の購入費用に充てようとしていた25歳の夫妻は、結局支払うことができず、無理心中をしてしまったんですよ」

 すると、黄鬼が泣き始めるではありませんか。

「おお、なんてことだ。あの夫妻は『本当に大切なお金なんです』と言っていたのにおれは『うるせー、お前たちは若いんだからもっと働け』なんて言って無理矢理奪ってしまった……」

 すると、他の鬼たちも泣き始めます。しかし、赤鬼だけは腕組みをしたまま仏頂面です。

「だからなんだっていうんだ! この世は強いものが勝ち、弱いものが負けるんだよ! その夫妻は弱かった。おれたちは強かった。ただそれだけだ!」

 桃子はこう諭します。

「赤鬼さん、それを言ったらあなたも子どもの頃があったでしょ? 保護者の方から優しくされ、こうして強くなったんでしょ? 強くない人のことも考えたらどうですか?」

 すると、赤鬼も同様に泣き出し、「お、おれが悪かった」とついに言うではありませんか。

「もう悪さはしないですか? あと、盗んだ金銀財宝は全部村人に返しましょうね」

 そして、桃太郎がこの提案に賛成か反対かの多数決をしたところ、12対0となり、鬼たちは乱暴をしないことを約束するとともに、金銀財宝を返すことになりました。

 鬼たちは桃太郎・桃子一行を海岸まで送ってくれ、「今度、また遊びに来いよ~」と言います。いつかの再会を約束した一行は村に戻り、金銀財宝を元の所有者に渡し、かくして村には平和が戻ったのです。これであの亡くなった夫妻の御霊も少しはやすらぎが訪れたのではないでしょうか。桃太郎と桃子はその後、村の代官さんとなり、ますます村は平和が訪れたのでした。