『ネットは基本、クソメディア』(角川新書)、7月10日発売です。ネットメディアのなりたちから、お金をいかに稼ぐか、ということに加え、昨年来の「キュレーションメディア騒動」について言及しております。DeNAの調査報告書を解説した章なんかもありまして、現在のネットメディアにどんなプレーヤーがいるのか、といった話が多いです。おりしも、俳優・西田敏行さんに関しあやふやな噂を基に「違法薬物使用」などと書いたクソメディアの管理人が書類送検されました。そうした連中についても叩いてます。そして、当ブログでは、書籍からボツにしたクソメディアとのやり取り部分について紹介します。

 私はNEWSポストセブンというサイトの編集担当をしているが、このサイトは、雑誌「週刊ポスト」「女性セブン」「SAPIO」「マネーポスト」を統合したニュースサイトである。これにネットのオリジナル記事を加え、ヤフー等に配信するビジネスを行っている。

 2011年頃、かなりむかつく件があった。実名を出すが、GREEである。「芸能マッハ!!!」というクソサイトで、「15000件以上の芸能ニュース・ゴシップが読み放題!新着ニュースは順次追加!!無料ニュースも配信中!!!」と題されている。ツイッターのプロフィール欄には、「芸能人の熱愛・結婚・破局・離婚から、マニアックなテレビネタまで幅広くご紹介! 芸能ゴシップネタがお好きなアナタに是非オススメします!」とある。同サイトに掲載された記事タイトルを紹介する。

〈NMB48・村上文香、ジャニーズJr.・有本祐とのデート写真流出!?〉
〈AKINA、ビビる大木との11歳差交際認める! 既に地元デートも〉
〈「流行語大賞」候補50語発表! スギちゃんが「ワイルドだろぉ?」で大賞狙う!〉
〈後藤真希、既にAV撮影していた!? 8000万円でGカップ巨乳をさらけ出す!?〉
〈AKB48、女性グループ初のCD総売上2000万枚達成!新曲「UZA」もミリオン突破!〉
〈益戸育江、大麻報道に激怒!「大麻は救世主」と意味不明な反論!〉

 いずれも独自取材はおそらくほぼナシ。単に、雑誌やスポーツ紙が報じた記事をパクってるだけである。しかも、盗人猛々しいことに、コピペができない設定になっている。公式ツイッターの最新のものは2014年1月15日だが、そこには「IMALU、175Rボーカル・SHOGOとの交際は続いていた! 既に親にも紹介済み!?」という記事へのリンクが貼られている。パクリ記事をいちいち打つのも悔しいし面倒くさいが、内容を紹介しよう。これは、女性セブンによる記事を基にした記事である。無駄にSEO対策ができている点も腹立たしい。いちいち、人名を明記する際は、よみがなを振っているのである。

〈お笑い芸人・明石家さんま(あかしやさんま=56〉と女優・大竹しのぶ(おおたけしのぶ=54)の娘のIMALU(いまる=22)。2011年は映画『ランウェイ☆ビート』にお出演し、歌手以外にも活動の範囲を広げている)

 こうした前書きがあったうえで、IMALUとバンド175RのSHOGOが恋人関係にあると女性セブンが報じたと書く。そしてこう続く。

〈同誌によると二人が揃って過去を出したのはT.M. Revolutionこと西川貴教(にしかわたかのり=41)のバースデーパーティー。西川のそばには交際宣言をしたモデルの菜々緒(ななお=23)の姿もあったという。「西川さんがカノジョ連れだったせいか、カップルでいらっしゃっている人がおおかったようです」(ラウンジ関係者:女性セブン)

 このパーティーにはGLAYやポルノグラフィティ、UVERworldといった豪華アーティストたちも訪れていたという。その中でも目立っていたのがIMALUとSHOGOだったとか。

「店には一緒にやって来て、店内でもず~っとふたりだけの世界でした。他に出席者がいることさえ忘れてるような…(苦笑)。ふたりの仲は、出席者の間では公認という感じでしたよ」
 二人の仲のよさは折り紙つきだったようだ。〉

 その後、国生さゆりがこのパーティーの様子をブログで書いていたという情報があり、さらに、女性セブン(NEWSポストセブン=コピペ可能)の以下のコメントを紹介している

〈「IMALUは、両親にもSHOGOを紹介していて、親も呼んでカレと一緒にご飯を食べに行ったりしてますよ。彼女は、SHOGOが経営しているバーを手伝うこともあるほど。このまま一気にゴールインなんてこともあるかもしれませんね」(ふたりを知る人)〉

 ただし、芸能マッハ!!!の場合「(ふたりを知る人)」を「(二人を知る人:同)」と、「ふたり」を漢字に変え、出展元を明記することで著作権法違反ではないと主張している様が見える。そして、最後に「IMALUの親であるさんまと大竹にはすでに紹介済みとのことだが、果たして結婚まで許してくれるのだろうか。(今井)」という「まとめらしき一言」を加え、独自取材風に仕立て上げている。

◆元記事ではこうなっている

 実際、我々NEWSポストセブンが報じた記事はこうなっている。タイトルは「IMALUと175R・SHOGO 実は2年も順調に交際続いていた」だ。そして、以下本文。

〈一流コレクションのステージをイメージしたキャットウオーク、19世紀フランスのシャンデリア、ルイ16世時代のキングチェア…。そんなセレブ感漂うラウンジは、日曜の深夜0時をまわって、一層ボルテージが上がっていた。

 T.M. Revolution 西川貴教(41)のプライベート・パーティーが行われていたのだ。もちろん隣には、交際宣言をしたカノジョでモデルの菜々緒(23)の姿も。フロアには、GLAYやポルノグラフィティ、UVERworldら豪華アーティストがお祝いに駆けつけていた。

「西川さんがカノジョ連れだったせいか、カップルでいらっしゃってる人が多かったようです」(ラウンジ関係者)

なかでも抜群に目立っていたのが、明石家さんま(56)と大竹しのぶ(54)の娘、IMALU(22)と175R・SHOGO(31)だった。

「店には一緒にやって来て、店内でもず~っとふたりだけの世界でした。他に出席者がいることさえ忘れてるような…(苦笑)。ふたりの仲は、出席者の間では公認という感じでしたよ」(前出・ラウンジ関係者)

 2009年に熱愛が報じられたふたりだが、当時はふたりとも熱愛を否定していた。しかし実際は、それから2年、順調に交際を続けてきたという。

「IMALUは、両親にもSHOGOを紹介していて、親も呼んでカレと一緒にご飯を食べに行ったりしてますよ。彼女は、SHOGOが経営しているバーを手伝うこともあるほど。このまま一気にゴールインなんてこともあるかもしれませんね」(ふたりを知る人)〉

 どうだ、芸能マッハとどれだけ共通点があるかが分かるだろう。これを一部上場企業であるGREEがやっていたのである。しかも、彼らは我々がGREEニュースに配信させてくださいと依頼した際、「ウチは芸能マッハ!!!という素晴らしい速報性のある芸能サイトを持っているので、おたくらの記事はいらないんですよね~」と若いアンチャンがエラソーにドヤ顔で言っていたのだ。そして「まぁ、おたくらの記事の配信は検討しますが、まぁ、どうなるかはわかりませんけどねぇ~」とまで言った。言ってることは立派だが、やっていることはただのパクリである。GREEは携帯ゲームが絶好調だった時代、とんでもなく驕り高ぶっていた。

◆任天堂の倒し方、知ってますよ

 2012年12月21日の夕刊フジには以下の記述がある。

〈実際、売上高だけが企業の価値判断ポイントなのだろうか。話はそれるが、最近面白い話を聞いた。ある人がソーシャルゲームで成功したグリーの面接を受けに行った時の話だ。若い面接官は履歴書を見ながら「ずっと、家庭用ゲームを作ってたんですねえ」とさげすむように言った後、「任天堂の倒し方、知らないでしょ? オレらはもう知ってますよ」と言ったそうだ〉

 ソーシャルゲームで一発当てたからといい、GREEが、任天堂をバカにしているのである。これは芸能マッハ!!!のことを褒め称えた担当者の姿勢とも共通している。その後、GREEはスマホゲームの「コンプガチャ問題」などもあり、業績は一時期低迷。もはや大口をたたくのが恥ずかしいレベルとなった。

 これについては、他のクソサイトもパクっている。とにかく、何らかの芸能情報を出したら、一斉にクソサイトがハイエナのごとく寄ってきて、コピペをし、文章を加工し、オリジナル記事かのように見せてPV稼ぎをするのである。「芸能7days」というサイトは我々のこの記事をこう加工した。見出しは「IMALU、175R・SHOGOと2年間交際続いてた!TM西川のパーティーに現れる【画像】」だ。【画像】ともあるが、単にIMALUと175RのCDのジャケットをパクっただけで、アマゾンのアフィリエイトを貼っているだけのものである。そして記事はこうだ。

〈モデルでタレントのIMALU(22)と、175R・SHOGO(31)の交際が2年間続いていたと、17日発売の「女性セブン」が報じている。2人は2009年に熱愛を報じられ、そのときは交際を否定していたのだが、先日T.M. Revolution 西川貴教(41)のプライベート・パーティーにそろって出席していたそうで・・・? 

(以下NEWSポストセブン記事を引用(いや、パクっている)、本書では略)

 ちなみに上記と思われるパーティーの様子を、タレント・国生さゆり(44)が9月26日付のブログで記しており、IMALUやSHOGOが写った写真も掲載されている。国生によると、SHOGOはパーティの発起人の一人だったとか。またIMALUは西川と同じ誕生日だそうで、サプライズで登場し一緒にお祝いされたのだそう。

 そんなIMALUとSHOGOは、上記のラウンジ関係者によると「ふたりだけの世界」だったというから、かなり仲睦まじい関係であることがうかがえる。2人は2009年に熱愛を報じられ、そのときは熱愛を否定していたのだが・・・? 2009年に熱愛が報じられたふたりだが、当時はふたりとも熱愛を否定していた。しかし実際は、それから2年、順調に交際を続けてきたという。

「IMALUは、両親にもSHOGOを紹介していて、親も呼んでカレと一緒にご飯を食べに行ったりしてますよ。彼女は、SHOGOが経営しているバーを手伝うこともあるほど。このまま一気にゴールインなんてこともあるかもしれませんね」(ふたりを知る人) 
(引用元:NEWSポストセブン)

 IMALUとSHOGOは、2009年7月21日付の「スポーツニッポン」で“10歳差熱愛”を報じられた。だがIMALUは同日付のブログで、SHOGOについて「音楽関係で仲良くさせてもらってる先輩のうちの一人」と説明し、交際を否定していた。

 その後、2009年10月10日に開かれた「ホンマでっか!?TV」(フジテレビ系、2009年10月19日スタート)の取材会では、明石家さんまが「(母娘から)機会ある時に『もう別れた』と言っておいて、と言われてました」(情報元:サンスポ)とIMALUとSHOGOの破局を暴露していたのだが、実は2年間も続いていたとは・・・。

 IMALUは、すでにSHOGOを両親(さんま&大竹しのぶ)にも紹介済みだというから、ある程度オープンな付き合いに発展しているのかも。このままゴールインとなるのか、気になるところだ。〉

◆情報商材を書いてみた


 芸能マッハ!!!については、2014年1月15日以降、ツイッターの更新が止まっているので、もうサイト自体は運営していないのだろう。ここで問題なのが、GREEの正社員が芸能マッハ!!!をスクープを連発する立派なサイトだと思っていることだ。単に他人の記事を使って補足情報をネットからくっつけ、最後に「結婚するかもしれませんね!」などのテキトーな憶測を書いてはい、終わり、ということだ。ただし、ネット業界にはこの手の考え方をする人は案外多く、特段驚くことではない。

 とにかく、印刷工程があるわけでもないため、いくらでもコンテンツを作れてしまうのだ。こうしたことから、「著名人(芸能人・スポーツ選手・犯罪者)」に「整形」「交際」「年収」「薬物」などの人の目を引きそうなキーワードをまぶし、過去の報道を繋ぎ合わせ、はい、記事一丁あがり! というお手軽記事作成術が蔓延したのだ。

 さて、私がこれまでにやった変な仕事では、「情報商材の制作」というものがある。情報商材とは、「あなたが大金を手に入れられない根本的な問題発見術と月に副業で120万円稼ぐ方法」など、射幸心を煽る文章(PDF)やDVDなどを販売することである。とあるIT企業に呼ばれ、話を聞いてみると情報商材屋だった。

「ウチで情報商材を作っている人は数多くいます。6割を書き手、4割をウチがもらいます。値付けはお任せしますが、大体4800円から9800円ぐらいが売れ筋ですかね」

 そう言った。だが、私が情報商材など書いたこともなければ、大金を稼いだこともなければ、何か得意技があるわけでもないことを伝えるとこう言われた。

「中川さん、あなたはライターですから『何か』は書けますよねね。何かを適当に、それらしく書いていただければ案外売れるものですよ」

 こう言われたので、私は「38人の女性と同時に交際し、後腐れなく関係を消滅させる方法」というスケコマシのような文章を書くことになった。実際問題として38人と付き合ったことはないのだが、一時期連日のように別の女性と酒を飲みまくっていた時期がある。その後何かに発展するようなことはなく、ただ酒を飲むだけだったのだが、この時の話を誇張し、肉体関係まで毎回持ち込めた、という話にすれば情報商材として成立すると言われたので、その通りに書いた。しかし、書けば書くほどうさんくささが増えてきて、結局納品することはなく、情報商材屋とはお互い連絡を取ることはなくなった。なにせ、書いている内容がこんな感じなのである。

女性は、あなたからの誘いを待っています。女性の側から誘うことについては、『あら、私のことふしだらな女だと思うかもしれないわ……』と考えてしまうのです。ですから、ある程度メールのやり取りをするような関係になったら、思い切って誘ってしまいましょう。案外彼女はあなたに好意を抱いているかもしれません。結局女性との時間を作れない男性のほとんどは、単に誘うという行為をしていないからなのです。野球選手だって、打席に立たなければ成績は残せません。それは女性を相手にする場合も同じです。打席に立たないくせに『結果が出ない』と嘆くのは愚の骨頂です。

 何にも心が入ってないひどい文章ではないか。これを1万5000字ほど書いたところで、さすがに罪悪感が出てきて書くのを諦めてしまったのだ。

 あとは、「ゲームの階級を作る」という仕事もあった。スマホゲームの場合、より高い階級になることを目標にする。プレイ時間を長くするか、課金をすることによって階級は上がっていくが、その階級を100段階ほど作るというものだ。たとえば、剣の達人を目指すようなゲームの場合、最下層が「始めたて」で、その後「見習い」や「棍棒使い」などに昇進し、「剣聖」「真・剣聖」「剣豪」「大剣豪」「ハイパー大剣豪」などになっていく。これも、適当な埋め草的に作るのだ。

##ここまで##

というわけですので、こんな話を入れてます。どうぞよろしくお願い申し上げます。