適菜収さんとの共著『博愛のすすめ』ですが、まだブログちゃんと書いてなかったので書いてみます。基本的には、2016年から2017年の時事問題について、適菜さんと酒を飲みながら話し合った内容なのですが、アマゾンの「じうn」氏によるカスタマーレビューがステキだったので引用させてください。





中川淳一郎と適菜収は以前から論調が似ていると思っていたが、まさか対談本が出るとは思っても見なかった。それにしても、予想通りの内容で笑ってしまった。「博愛」がテーマであるが、毒の入りすぎた「愛」であった。

2人の論調は確かに似ているが、中川は「攻め」「行動派」「近代的」で、適菜は「保守」「慎重派」「伝統的」と対照的だと感じた。しかし、この一杯飲み屋で話しているような(?)奇妙な対談は、実によくかみ合っている。中川が適菜の持つ知識をリスペクトし、適菜は中川の持つキャリアに興味をもっているのが分かる。

本の内容に関しては2人の著書を読んでいる人には説明不要であろう・・・今の日本の様々な問題点をぶった切っている(特に政治)。メディアやマーケティングに踊らされる大衆を「ミジンコ脳」と呼んだり、某有名女性哲学者を「バカなオバサン」と切って捨てたり、大学院に行くのは就職に失敗したからという奴が増えたとか・・・。戦前だったら絶対出版停止処分になるような本である。

この本を読んで怒り心頭になる人、腹を抱えて笑う人、生き方が変わる人、様々であろう。いずれにしても2人の著者の狙い通りなのである。それが「博愛」だから・・・。ちなみに、私は自分が「ミジンコ脳」であることがよく分かった。

いやぁ、こう書いていただきありがとうございます。じうn様が適菜さん言うところの「ミジンコ脳」とは到底思えませんが、ちょっくら私としては愛を書いてみたい。終盤の「愛するということ」部分をスキャンしました。

hakuai


ここで私は「愛する」ということは具体的に言い過ぎてはマズい、と述べています。

適菜:人の価値観はそれぞれで、それに従って生きていければいいという考え方があります。社会の規範に縛られるのではなく、自分の価値に従った方がいいと。私はそれは違うと思う。すでに人間は価値判断の網の目の中で生きてきているわけですから。(中略)世の中には大事なことがあるということです。最終的にそれは愛です。そこにつながっていれば、くだらないことにかかわらずに済むと思う。

中川:「なんか好きだ」とか「なんか嫌いだ」という感覚は言語化できない。でも、自分にはしっくりくる。

適菜:「なんか違う」とか。

中川:女の人に「私のどこが好きなの?」と聞かれて、Dカップだからいいと言ったら信用されないと思うんですよ。

適菜:言葉で説明しようとするのが、若者の陥りやすい罠です。

中川:正解は「なんか好きなんだよ」です。すべての問いに対して答えを求めるのが今の世の中です。政治もそうです。オレはもっと人間世界は曖昧でいいと思う。

そして、適菜さんは次のページで新渡戸稲造とツァトゥストラについて述べ、「おわりに」に突入していきます。

全編こうした感じで進んでいくのですが、私が現実の話をし、それに対して適菜さんが哲学的見地から様々な解説を加えるという体で進みます。私がなんとなく「人間の愛おしさ」を感じられる部分を2つ紹介しますね。一つ目は「ラーメン屋でカウンター席にカバンを置き、席を一つ余計に使うバカ」です。

適菜:コンビニの入り口の自動ドアに挟まっても、自動ドアに対して怒らないですよね。だから、カウンターの椅子に荷物を置くようなポン中にいちいち腹を立ててもしょうがないかなと思います。こちらの次元を少しだけ上げると、そういうポン中も、自動ドアも同じです。

中川:自動ドアなら、まだマシなんですよ。一応人間が作ったものだし、人間が店に設置したものだから、責任を問える可能性がある。昔読んだ東海林さだお(1937~/漫画家、エッセイスト)のエッセイで好きなものがあって、おばさんが公園を歩いていて、石につまづいて転びそうになった。その後ずっと石を睨んでいたという

適菜:いい話だなあ。おばさんと石は同レベルだったんですよ。でも、近代人は「責任」という概念に汚染されていますよね。なにかあれば「責任を取れ」と言い、責任を取ると満足してしまう。

中川:突然雹(ひょう)が降ってきて車の窓ガラスが割れたとする。そしたら、天気予報で雹を予想していなかったからだと文句を言うやつが出てくるはずです。つまり、人為的なもののほうに引っ張りたいわけですね。人間に責任を押し付けても仕方がないことはたくさんあるけれど、人間社会は「責任」という概念中心で動いている。いかにして自分の不幸を、他人を不幸にすることによって挽回しようかということばかり考えている。そんな状況だからこそ、人間に対する愛というものを考えていかなければならない。

続いては「愛の範囲」について。隣国同士仲が悪いとかも含めてです。

中川:宇宙人が地球に攻め込んできたら、地球市民として連帯感を深めることはできますけどね。

適菜:ナショナリズムの成り立ちもそうです。外敵の存在を意識するから、国境の問題が出てくる。日本と韓国や中国だけが仲が悪いのではなくて、多くの国は近隣諸国と仲が悪い。国境によりナショナリズムを成立させているからです。日本が南米諸国と政治的な緊張がないのは、単に遠く離れているからです。愛の問題にしても同じです。

(中略)

中川:前に2ちゃんねるの書き込みで面白いのがあって将棋の羽生善治(1970~/将棋棋士)の話です。羽生のライバルの渡辺明(1984~)という棋士を支持している人たちがいるんだけど、両派は仲が悪い。ただ、地球が宇宙人に攻められ、宇宙人に地球を支配させるかどうかの勝負を将棋でやることになったとしたら、渡辺支持者も、やはり羽生を出すしかないだろうと。それでみんな納得したんです。そこで博愛が生まれたんですよ。



こんな感じで、テーマは「東京都知事選」「寿司屋の符牒」「B層」「広告代理店」「愛国」「コメンテーター」「昔の人は本当に賢かったのか?」などについて二人、けっこうマジメに語り合った内容です。対談本って初めての経験でしたが、適菜さんとこうして仕事ができ、感謝しております。


博愛のすすめ
中川淳一郎
講談社
2017-06-23