一見チャラそうに感じられるであろう広告業界で働く人も、基本的には真面目な仕事人が多いわけで、より良い結果を出そうとするし、上司から怒られたくないと考えるわけです。そんなことを色々書いた『電通と博報堂は何をやっているのか』が発売されましたが、ちょっくらここでは昔聞いた小噺的な「そんなことまで気にするのかよwww」みたいな話を書きます。

 ただ、広告ってのはイメージを上げるのが目的ですから、わざわざ大金払ってイメージを下げる結果になる(との懸念を持つこと)のも分かります。しかしながら、名指しをされた業種が気の毒だな、と思う面もあるわけです。

 

今回も、書籍から落とした部分を紹介しますね



 クライアント企業は広告代理店に対しては好き放題言うようなところがある。所詮は御用聞き、と捉えている面もあり、最終的な取引先(たとえばテレビ局)と自分自身は密接にかかわらないため、下請けたる広告代理店には無理難題を突き付ける。その一つが「CMを流す順番」である。
  
 CMでは、次々と様々な企業が登場するが、「一流企業」を自認している企業は流れる順番を気にする。簡単に言うと、イメージの悪い企業の前後にCMを流してほしくないと考えているのだ。武富士やアコムなど消費者金融CM全盛の時代、一流企業は広告代理店に対して「消費者金融と隣り合わないようにしてもらえるかな?」と依頼をしていた。あとはパチンコも同じような扱いをされていた。それに対しては「100%のお約束はできませんが、ご要望はきちんとお伝えしておきます」と伝える。テレビ局の側もその一流企業は大スポンサーであるため、流す順番については考慮をすることになる。

 また、CMのオンエア費用は昔からの付き合いがある一流企業と新興企業の間ではそれなりに差がある。20年前の消費者金融は定価でその枠を買っていたが、継続して多額のカネを支払ってきた一流企業は何割か値引きした額で枠を買わせてもらえる。

 新興企業や業界の場合は、いつ衰退してCMを出稿してもらえなくなるか分からないため、表面上は感謝しつつも、テレビ局は強気の姿勢を見せるのだ。とはいっても、現在は広告予算をネットにシフトしつつあるということもあり、かつては「二流」扱いされていたサプリメントメーカーなどに対しても丁寧に接しているという。スマホゲームのCMを担当する広告会社営業マンはこう語る。

「テレビ局は当初、スマホゲームのCMを流させてください、とお願いしたところ、『はっ? スマホゲーム? 任天堂さんやバンダイナムコさんやコナミさんじゃないんでしょ? そんな会社聞いたことないですよ』といった態度でした。スマホゲームの初期の頃はこんな感じだったんです。でも、スマホゲームが続々と登場し、課金でボロ儲けする企業が大量にCM出稿をし始めたら、途端に扱いが変わったんですよね。『いやぁ、次の新作が出た時も是非!』なんて言ってくる」

 現に、今テレビを見ているとスマホゲームのCM花盛りである。それだけテレビを見る層とスマホゲームをする層の親和性が高いということを意味しているわけだ。その一方、かつてCMの常連だった家電のCMはとんと見なくなっている。東芝が『サザエさん』の一社提供を降りたのはバブルの負債を整理する必要があった1998年。そして最近の粉飾決算や米原発企業の巨額損失などもあり、2017年2月、J-CASTニュースにはこんな記述も出た。

 〈深刻な経営不振に陥っている東芝が、人気のテレビアニメ「サザエさん」(フジテレビ系、日曜18時30分から19時放送)のスポンサーから降板する可能性が出てきた。  J‐CASTニュースの取材に東芝は2017年2月15日、「降板」について肯定も否定もしなかった。〉

  こうして広告にはその時々の「花形」があるが、広告業界は案外ドライである。現在スマホCMやIT企業を優遇しているものの、いつかCMを流せない経済状況になったら家電、電力会社、ガス会社、大手食品メーカー、自動車会社といったCM界の老舗を大切にしつつも、新たな「一発屋」を求めて積極的な営業活動を行うだろう。そう、かつての「銀座じゅわいよ・くちゅーるマキ」(宝石)、や消費者金融、パチンコ・パチスロが大量にCMを流し、あれが一過性のものだったのと同様に。