東京都知事選がいよいよ盛り上がってきましたが、メディアによる鳥越俊太郎さん、小池百合子さん、増田寛也さん過剰推し報道でますますこの3人以外が泡沫候補扱いされてきております。51歳無職の武井直子さん、おい、その乱れた御髪の写真以外なかったのかよ、というツッコミや、公然と嫌韓スピーチを生き生きとできる立場を獲得した桜井誠さんの扱いに各メディアが腫れ物に触るような状況になっている中、鳥越氏ですよ、私がこのバカブログに書きたいのは。

 多くの人にとって鳥越氏といえば、テレビ番組を仕切るキャッ、ダンディなお・じ・さ・ま…、ってな感じではありますが、私にとっては

オーマイニュースを立ち上げた時はネットに革命を起こすと息巻いていたくせに、押し寄せる(自分にとっての)バカネットユーザーに恐れをなして逃げ出した人

 というものであります。2006年夏、韓国発の市民記者ニュースサイト「オーマイニュース」創刊にあたり、編集長に就任した鳥越氏は「異論、反論ドンドン書いて下さい! そんな活気のあるメディアにしようではありませんか!!」と創刊宣言で語り、ついにあの時は「インターネットの力でクソマスゴミを潰す時が来た!」といった高揚感がありました。

※(つーか、今Wikipedia確認したら青木理さんが副編集長だったのかよ、すっかり忘れとった! 平野日出木さんだと思ってたぞ)

 私もこの時はネットニュースの仕事をすでに始めていたので、「チクショー、とんでもない敵が出てきやがった。よりによってあの敏腕ジャーナリスト、鳥越さんかよ……」と白旗を上げたものです。しかも、オーマイニュースが初日に叩き出したPVは私の編集するサイトの1ヶ月分の10倍。つまり、1ヶ月に換算すると、300倍のアクセスを獲得したのでした。

 しかしながら、鳥越氏は当時66歳。ネットの経験がないまま果たして「編集長」をやってられるのか、ということは当時から散々炎上を経験していたネットニュース編集者の私にとっては疑問でした。また、オーマイニュース編集部は紙メディア出身のエリート編集者が揃っているような印象があり、ネットを一段低く見ているところがあったように感じられます。さらに、すぐに馬脚は現れるのですが、やはり「市民記者」を名乗る方々の記事のレベルが酷かった。日韓友好を謳い、憲法九条を礼賛して米軍ゴーホーム! みたいな記事が多い。コメント欄では「似田さん」という皮肉の利いた人を中心に、記事を罵倒したり、編集部への中傷が多数書き込まれます。

 秋になるとオーマイニュースはコメントだけを書くことができる「オピニオン会員」の廃止を議論し始め、創刊宣言はどこに行ったんだよ、オラ、といった状況になります。このグダグダ状態を利用したのが、かく言う私です。元々鳥越氏を含め、オーマイニュースはネットでは開始から3日ほどで嫌われ始めていたので、私も彼らを批判することに決めました。注目度の高いサイトを批判することにより、自分のサイトへの注目度を高めるコバンザメ戦法であります。

 なぜか私の編集するサイトでオーマイニュースに「創刊宣言はどこに行ったのだ! 鳥越、貴様甘い!」と「喝!」を入れると今度はオーマイニュースの市民記者から反論が来て、そこに私は「●●記者は何も分かっておらん! 貴様には喝だ!」と再び怒りの鉄槌を振り下ろすという茶番劇をやり続けたのでした。こんなことをやっているうちに、いつしかワシらの方がオーマイニュースに圧勝する状況となり、一つの真理に気付きます。

 紙メディアの論理を振りかざしてもネットでは勝てない

 それは、まさに鳥越氏の論理だったのです。権力を批判し、日韓友好を訴え、無辜の民の活動はすべて素晴らしい--こういった左派論調を格式高く訴えれば、必ずや読者はついてくるはずだ! といったところがオーマイニュースにはあった。しかし、ネットというものはそういう世界ではない。もっと荒くれ者が好き放題に場をかき乱しては罵倒を書き、プロをからかっては煽りを入れ、相手が歯ぎしりしているであろう姿を想像してはさらに集団で攻撃を仕掛ける。

 その一方で、本当に面白いものや、頑張った人には惜しみない拍手を送る場でもあります。

 外野から見ていた私の目には、紙メディア出身者中心のオーマイニュースは、「市民記者のレベル」そして「読者」に対して心底呆れていたように思えます。「あぁ、我々がこれまでやってきたジャーナリズムなんてものはインターネットの世界にはないんだ……」。

◆鳥越氏がオーマイニュースで見せた6つの特徴

 こんな嘆きが聞こえてきそうなオーマイニュース編集部ですが、鳥越氏は創刊当初は何本か記事は書いていたと記憶しております。しかしいつしか存在感がまったくなくなり、その反面、オーマイニュース内部の人からは鳥越氏の破格とも言えるギャラを聞き「チクショー!」と歯噛みしてしまったさもしい私もおりました。

 結局鳥越氏は2007年2月、編集長就任からわずか5ヶ月で体調不良を理由に退任します。元週刊現代編集長の元木昌彦氏が二代目編集長に就任しましたが、この5ヶ月ですっかりしみついたオーマイニュースの迷走イメージはもはや覆せない。鳥越氏は自身のプロフィールからもオーマイニュース編集長と明記しない「黒歴史」と化したのでした。

 元々私は鳥越氏のことはなんとなく好きでした。朴訥とした筑後弁で喋る様は、九州にルーツを持つ私としては親近感がありましたし、とにかくテレビに出ている時の見栄えが良かった。しかし、オーマイニュースとのこの騒動を見て、いくつかの特徴を見出したのです。

 ・上から目線(紙メディア・電波メディアの方がネットより上だもん!)
 ・神輿に乗ることを考え、実務はしない(実質的「編集長」業務はしていなかった)
 ・一般大衆の正直な意見に弱い、想定外のことに弱い(ネットの揶揄に耐えきれなかった)
 ・ちやほやされ慣れている(ネットニュースの編集者でチヤホヤされるヤツなんて不要です)
 ・改善する気概がない

「改善」については補足をしておきましょう。ネットニュースなんてものは、決まった「型」なんかないし、ダメだと思ったらすぐに軌道修正をしてしまえばいいんですよ。鳥越氏は体調不良で5ヶ月後にやめましたが、改善の時間はたっぷりありました。というのも、オーマイニュースは8月28日のオープン前からすでに「創刊準備ブログ」段階で炎上していた。だから、オープンの日も大炎上する事態は避けられた。そして、オープンから数日経ってもやはり炎上は続いていたし、編集部への批判は殺到していた。

 9月中旬にはなんらかの策は間違いなく打て、秋の「オピニオン会員制度廃止問題」なんてものは回避できた。しかし、それをやらなかった。恐らく「私はネットは初心者です」みたいな甘えもあったことだろう。今回も政策のことはようわからないといったことを主張している。勉強する、とも言ってる。

 そして

 ・見切りだけは早い。そこの勘は鋭い

 実際、元木編集長でもオーマイニュースは立て直せず、3代目編集長・平野日出木氏でも鳥越氏退任からわずかわずか2年2ヶ月で潰さざるを得なかったわけで、ここはさすが、鳥越氏の慧眼と言えるでしょう。

 ここで私が鳥越知事になった場合懸念するのは、上記の特徴をまだお持ちだとした場合、突然「都民はバカで暇人だ」とか「都議がワシの言うことを聞かない」とか「マスコミが醜聞を狙いまくり過ぎている」なんて怒りだして「もうやーめた。さっさと退職金よこせ」なんて言い出さないかということです。

 オーマイニュースを途中でほっぽりだしたのは、まぁ、いいでしょう。出資者のソフトバンクとかが困るだけで、あとは従業員が仕事を失うぐらいですから。しかし、都知事とはそんなに軽いものではない。もし知事になった場合は、オーマイニュースの二の舞だけは避けていただければ、と都民として切に訴えたい次第であります。

 なお、私のサイトを飛躍的に上向かせてくれたオーマイニュースとの抗争については、以下の本に詳しく書いておきました。最後に宣伝を仕込むというセコいマネをして済まぬ、済まぬ。異論、反論ドンドン書いて下さい! そんな活気のあるブログにしようではありませんか!!

ウェブでメシを食うということ
中川 淳一郎
毎日新聞出版
2016-07-01