「コピーライターの目のつけどころ」というブログの〈 東京コピーライターズクラブ(TCC)は、そろそろ解散すべきだと思う。〉というエントリーが実に秀逸で業界の問題点を浮き彫りにしているので、それに触発され、「業界団体」というものについて考えてみる。それもIT業界の、である。
このブログでは、「TCC2016」というコピーライターのための賞の応募チラシの文面に異議を呈している。

“    誰に、

    ほめられたいんですか?

    
    「いいね!」と

    仲間うちに褒められるのも

    うれしいんでしょうけど、

    本当は、誰よりも、

    一番厳しいあの人に褒められたい。

    ですよね?


とあり、コピー業界の大重鎮3人がモノクロで重厚感たっぷりに写っている。最終審査員35人の名前も下の方に書かれているが、いずれも業界の重鎮の皆様である。同ブログは、以下のようにも指摘する。

いや、違うでしょ?そんなチンケな理由でコピー書いてるんですか?重鎮に褒められたいから日々の仕事をしているんですか?上のひとに認められたいから、仕事するんですか?

この広告が、広告業界のダメさ加減を物語っているように思います。つまり、閉鎖的で、内輪的で、排他的で、「社会のほうを見ていない」ということが表れてしまっている


まさにそうなのである。そして、広告の知名度が低かった時にはTCCのような団体も必要だったが、もう今の時代にはいらないのでは? と述べた。

さて、ここで未だに怪しげな扱いをされがちなITの中の、しかも「コンテンツ作る人々」限定の業界団体を考えてみる。絶対にそんなものは誕生しないのは分かっているが、総務省か何かが「あのよ、お前らそういった団体作らなかったら処罰するぞ、オラ」と会社だろうがフリーだろうが言ってきたとしよう。そして、日本全国の「ネットのコンテンツを作る人」が入る。想像するだけで悶絶する。以下、そのシミュレーションである。

【日本ネットコンテンツ制作者共同組合ストーリー】(あくまでもフィクションです

はぁぁぁ、もうオレイヤだよ……。なんでいつもオレがこんな役回りを押し付けられるんだよ……。そう渋谷・マークシティ脇の安酒場で午後2時に一人くだまいて1本500円の大瓶ビールを飲むAMN徳力基彦は、日本ネットコンテンツ制作者共同組合の会長に就任、いや、就任させられたことを心から悔いていた。

元々IT業界の人々なんてオフ会をするだけでもドタキャンありの、返事よこさないなど、ルーズで個人主義的な人間が多いのに団体を作ろうなんてことに無理があったのだ。ある日、突然山本一郎から「あのさ、総務省が団体作れって相談されたんで、徳力さん、あとはよろしく」と言われ、そのままオレが動くことになってしまったのだ。Facebookとツイッターで「誰か会長になりませんか? 支部長をやってもらえませんか?」と呼びかけるもなしのつぶて。挙句の果てには「おっ、また火中の栗を拾いに行くのですね!」なんて言われる始末。

そんな形で開始したのだが、オレは組織を作るところまではなんとか動こうとは思った。なにせ、インターネットがあるお陰で今のオレがあるのだからな。インターネットには感謝しかない。団体を作るというのも、総務省の命令なのであれば、それは監督官庁の意向には従わなくてはいけない。

徳力はこう考えていた。しかし、これまでの茨の道を考えると、これからは画鋲かまきびしだらけの道になるのでは……と暗澹たる気持ちになり、昼間からビールをあおるしかないのである。徳力は一つ一つ振り返ってみた。

■メンバー集め

知り合いが多く、核となる人物を考えてみた。人材は多くいる。多種多様な会社、かつ様々な年代の人々で核となる人がいたら、その人から広げていけばいいし、いずれは支部長を任せられると考えたのだ。その結果、徳力は以下の人に声をかけた、その時の対応と合わせて紹介しよう。

・山本一郎:楽天が今年は優勝争いしてるんで無理っスよ! あと、今内容証明送りまくってて忙しいんで、あ、そいえばロシアにも行かなくちゃ--でなしのつぶてに

・津田大介:いやぁ~、解散総選挙になりそうじゃないですか……。今、ちょっとヤバいんっすよ!

・小飼弾:ワシ、読書時間減るのイヤだ。

・kanose:今、自転車が気になってそれどころじゃないんだよなぁ……。

・バーグハンバーグバーグシモダ:えっ? そんなマジメなことやりたくないっスよ。

・中川淳一郎:酔っ払ってて声をかけられたことを一切覚えておらず、催促をしたら「えっ? 徳力さん、そんなことやってたんですか?」と言われる。

・田端信太郎:会合やるんだったら、タワマン1棟買って、年会費300万円ぐらいとってシャンパン飲みまくりましょうよ!

・はあちゅう:そんなことよりサロンやりましょう♪ 悔しいことをバネに、とにかく新たなるビジネスを作っていく方向で考えた方がいいんじゃないですか? 今さら業界団体なんてダサいですよ。徳力さんほどの人がそんなこと言うとは思いませんでした。

・イケダハヤト:東京で会合あるんですよね? 高知で会合あるんだったらぜひ♪ 東京のあの消耗する空気、耐えられないんですよ。それにひきかえこっちはジビエもトマトもおいしいですよ。

・いしたにまさき:僕も色々やってましてね。最近、ゲームが楽しいんですよ! 時間あったら行きますけど、案外仕事も読めなくてね……。

・佐々木俊尚:う~ん、3つの拠点を行ききしていて、タイミングが合うかどうか……。ご協力したいのはやまやまなのですが、私、現在マグロを釣り上げることに最大の関心がいってしまいましてねぇ(と重低音のボイスで語る)

・ヨッピー:あぁ、いいっすね。でも、そんなことよりキャンプしましょうよ。

・家入一真:何度連絡しても捕まらず

・ろくでなし子:「連絡おまんち申し上げます!」というメールの返事を見て徳力は一気に「この人は誘わないでおこう…」と思ったのである。

当然、楽天やLINE、サイバーエージェントといった企業は大企業なだけに形だけは入ってくれたものの、ネットの場合は上記のような個人が周囲の個人を巻き込まなくては業界団体というものは成立しない。唯一頼りになりそうなのがcakesを率いる加藤貞顕だった。結局、徳力は加藤を頼りに、9年2ヶ月をかけ、ようやく組織化にこぎつけたのだった。

■会合について
総務省は年1回の総会を義務付けていたが、「そんなのチャットでいいっしょー」「Facebookグループ作って書き込める人がやればいいじゃないですか?」という意見が殺到し、まだどのような形でやればいいのかが決まっていない。

徳力が今、こうして昼間から酒を飲んでいるのも、1時間前に総務省の役人から「いい加減に早くやりなさい」と怒られたからである。

■会費について
AMN内に事務局は設置することにしたため、アルバイトを1名雇い、事務処理や会員への連絡を行うこととなった。封書や通信費等もかかるため、会費を年間3000円ほどは徴収したいものの、「今年の売り上げが40万円だった!」というフリーランスが続出。そこで家入一真の構築したクラウドファンディングサービス・CAMPFIREで資金を集めることにしたが、200万円の目標にまったく到達しないわずか1万3000円しか集まらなかった。これが徳力の頭痛の種となっていたのだった。

これからオレはどうやって生きていけばいいのだ……。思えば人の尻拭いばかりしている人生だった……。人は勝手に「IT業界の黄蓋(三国志で「火中の栗」を拾いに行く武将)」や「IT業界の名敗戦処理」とか言うが、今回の団体設立ほど酷いものはない。一体オレの人生なんだったのだ……。

徳力の苦悩は続く--


※まぁ、こんな感じになるだろうから、ワシとしてはIT業界のTCC的なものがなくて良かったなぁとつくづく思うのでありました。