初の書籍を出した30代モノカキがこれからの栄えある人生を考える会」を11月11日20時~下北沢のB&Bでやるわけですが、先日オレが書いたブログで「仕事の『量』だけで勝負する無名フリーライターとしての稼ぎの限界は800万円」ということを書きました。


 すると、常見陽平氏が30代中盤を過ぎたフリーランスの生存戦略 年収800万をどう楽しくもらうかというエントリーを書き、Blogosにも転載され、ランキング上位に来ていましたね。年収800万円というキーワードが多少なりとも注目されたのかな、と思ったので、800万円ってどんなもんだったのかなぁ、と改めて考えてみます。

  元々雑誌黄金時代のライターってスターが多かったんですよね。「カタカナ+漢字」の組み合わせが多く、何やら楽しげな仕事だな、と思っておりました。当時 のスターともいえる存在のライター陣を見ると、こりゃ、すげぇや、と思うわけですよ。ナンシー関、カーツ佐藤、下関マグロ、北尾トロ、堀井憲一郎、小田嶋 隆、川勝正幸、それに「B級グルメ」という言葉を作った一派や、文芸春秋の「Title」という雑誌で好き放題やっている一派……。こうした方々を見るに つけ、「名前を出してやってる人はすげぇな」と思ったわけです。当時出会ったライターの一人で「ブレーメン大島」という方がいまして、この方はプロレスの リングアナもやっているとかいい、さらにはいつもブンデスリーガ・ブレーメンの服を着ている。さすがキャラ立ちしたライターってすげぇな、と思っていて名 前の由来を聞いたら「オレは無礼な男だからブレーメンだ」と、これまたナイスなエピソードを披露してくれるではないですか。

 他にも、ア ニメについては圧倒的知識を持つ「かきあげこ」さんとかと仕事をすると、必ず1行あたりの文字量と何行かを聞いてくるのですね。オレなんかテキトーだから 「まっ、1000文字ぐらいですかね?」とか言うとかきあげさんは、「私は余計な余白を作りたくないので、正確な1行あたりの文字量と行数を知りたいので す」と言われ、あぁ、さすがはベテラン、しかもペンネームの方……と思ったのでした。

 さて、私がライターになった2001年は女性ファッション誌を除き、雑誌低迷時代に既に入っておりました。ギャラも以前よりも下がっているようでして、名前の通った大御所でなく、無名の遮二無二働くライターを使い倒す時代に入っていたと思います。

  となれば、1ページ15000円ぐらいで、取材は3カ所、みたいな仕事が大量にもらうわけで、そういったページを月に15ページほどやる。それに加えてい くつか単発の仕事を受けて、月収30万円ぐらいを確保できるわけですね。それでなんとか一安心、と思うも、一番元気で、仕事がたくさんもらえる20代後半 で年収300~400万円だった場合、よっぽど成長するか、専門家になるか、名を上げない限りは、40代で年収150~250万円台まっしぐら、というこ とがなんとなく予想ついたのです。

 周囲の若手ライターの中には、いきなり失踪するヤツが出たり、廃業して実家に帰るヤツも出るなど、こちらも焦りに焦り始めます。そして30歳になると「こりゃ、ダメだ。最末端の仕事をしているだけだったらどう頑張っても先がない……」と考えるようになります。

 そこで、「あなたにこの6ページ、任せます。編集、撮影、イラスト、全部おまかせします」という状況を作るべく動き出すのです。

◆一段上の「カネを握る人」になってみたら…

  つまり、何らか専門分野を持たないライターは「先生」として割の良い寄稿仕事とかは絶対にもらえないため、よりジェネラリストである「編集」に活路を見出 すのです。こうなったところで、ようやく800万円の道が見えてきます。しかしながら、ここでも、ほぼ他人に振らず、自分で編集、、執筆、撮影、イラストをやって しまう、という状況になるのですね。

 プロカメラマンに相談して「プロっぽく見える一眼レフカメラ」と「プロっぽく見える撮影の構え」な んかを教えてもらって「オレ、カメラも慣れてるんだからな」的空気を出そうにも、生来のヘタクソさから、ピンボケだらけになったりもする。カメラのレンズ が曇っているのを女優に指摘されたり、まぁ、バンバンと粗が出ているのですが、「このままじゃ低収入まっしぐらだ……。少しでも今仕事をたくさんし、色々 経験をし、実力者に気にいられ、将来に渡って仕事がもらえるようにしなくちゃ!」と恥も外聞もプライドもなければ、本当にクソをしている余裕もないような ぐらい、取材と原稿書きとレイアウト作りなどをやり続けているわけです。

 あとは少しでもまとまったカネが欲しいのでゴーストライターを する。これが50万円ぐらいもらえて案外割が良いのであります。その本が売れようが売れまいがどうでもいい。こちらはとにかく言われたことをやるだけで、 むしろオレがこの本にかかわったことは言いたくもない--そんな気持ちになるも、目の前の50万円の魅力はハンパない。ありがたかったです。

  気付けば、寝るのは毎朝1時で起きるのは4時。起きたらすぐ、コンビニへビールとカップラーメンを買いに行き、朝ご飯。昼はコンビニでサンドイッチとビー ルを買い、夜は280円だった吉野家か、ハンバーガー59円や65円だったマクドナルドへ。風呂に入っていないものだからインキンになり、遊んでいる時間 もないものだから友達もいなくなっており、気付けば一人ぼっちのクリスマスにお正月--。こんな状況になってようやく800万円の収入になるのですが、周 囲の同世代サラリーマンは着実に結婚もし、積立預金なんかもしていて、人生の先が拓けてくるくる状況になっております。

 そして、昔の友 人は没落した私を見下すプレイをすべく、上海勤務が決まったところで連絡をしてくる。大学・会社員時代には一回も連絡をしていなかったというのに、「ふ りーらいたーとやら」になった、よし、オレの方が上だ! しかもオレは結婚したゾ! あいつに対してマウンティングを仕掛けて圧勝できるぜ、グハハハハ ハ! という状況になり、初めて連絡をくれるのでした。上海に連れて行くという新婚の美人妻を脇に置き、「お前、まだ結婚してねぇんだろ~。結婚はいい ぞぉ~」と言っていかに自分が大手メーカーで出世しているかを自慢する。「お前、何の仕事してるんだよ?」「ライターだよ?」「えっ、お前の名前なんて見 たことねぇよ。やーい、三流、三流」なんて囃し立てられるも、上海に栄転の彼の前では「グヌヌヌヌ」とやるしかない。


 これが年収800万円の無名ライターの実態だったのでした。今から10年ぐらい前の話です。

 それではB&Bでお会いしましょう。どうぞよろしくお願いいたします。