DSCN2731いやはや、好きだった店と別れることになるというのは実に寂しいことでございます。あぁ、この2カ月ほど偏愛していたタンメン屋、さようなら。
 2か月前、その店のタンメンはあまりに透き通っており、幅広の麺と、最後までアツアツのスープ。良い感じにシャキシャキに炒められた肉と野菜、さらには自家製の唐辛子粉沈殿ラー油と、すりおろした生姜のトッピングが実にすばらしい出来栄えだったのです。「おぉぉ、これは久々のヒット外食!」とばかりに頻繁に通うようになったのですが、昨日はヒドかった。

 あ、写真のタンメンはオレが家で作ったタンメンなのでその店とは違うのですね。で、昨日のタンメンの話に戻るのですが、1週間の過酷な労働を終え、「ふぅ、やっと終わったかァ…」と一人タンメンを食べる時間というのは至福の時間なのであります。迎え入れてくれたのは、サッカー日本代表FW・武藤嘉紀似の爽やかな若者です。いつもながら丁寧な対応をしてくれ、「どうしてキミはそんなに立派に生まれてきてくれたの?」なんて思うぐらい感じの良い方なんですよね。

 それで、ニンテンドー3DSで「3DS三国志」をやりながら、我が中国最強・韓馥軍を曹操領の喉元に侵攻させるのでした。そこに武藤君の「お待たせしました!」の声とともにやってきたのが、例の絶品タンメン! 曹操に対しては「今日はここまでで勘弁してやる」と言いつつDSの蓋を閉じ、箸を手にし、丼を見たところで私は固まってしまいます。

 あれれ……。スープが灰汁(アク)だらけ……。あれ、ここのスープって完全に澄んでいたよな……。どうしちゃったんだ? 味を変えて、この仕様になったのかな? まぁ、いいや、飲んでみるか。あれ? 濁った味わいになってるぞ。ピン! とした塩味に微妙に野菜と鶏ガラの味わいというよりも「獣臭い」という感じがピッタリくるぞ!

 あ、そうかそうか。ラー油と胡椒と生姜を入れると丁度よくなるんだよね! とこれらを入れてみたのですが、濁り切った味わいは変わらないどころか、サッパリ生姜とデレデレ灰汁が混じり合い、これぞ地獄の雑巾搾りタンメンの完成! さらには、普段は唐辛子が大量に沈殿しているラー油も、ラー油だけで、唐辛子がほとんどない。隣の席のラー油も同様だった。

 一体どういうことだか分からないまま、釈然とタンメンVer.1.2を食べ続けるのですが、「なんか違う、なんか違う」と思いながら食べ進めるのであります。そして、「あぁ、ダメだ、これ以上は食えねぇ。マズい」と思い、多少残し、普段は完全に飲み干すスープもかなり残し、武藤氏に聞いたんですよ。

「あのぉ、今日って作った人は普段と違うのですか?」

「はい!」

 そうにこやかに答え、作ったニイチャンを武藤氏は指さします。

 別人が作ったようですね。だとしたら、「灰汁だらけ」「ラー油に唐辛子がない」というのも、うなずける話となってきます。オレはこれまでずーっとこの店の「改良タンメンVer.1.2」だと信じつづけ、「食べ終わったら満足するはずだ。あぁ、そうだ、絶対に満足するはずだ。この店は、少し作り方を変え、さらなる高みを目指しているんだよね」と自らを三国志の戦闘時の特技「鼓舞」「激励」のごとく叱咤しながら食べ進めていたのですが、結局は「幻術」をくらい、悶絶するという事態になってしまったのです。

 武藤氏に対しては「やっぱそうでしたかぁ……。今日のスープは灰汁だらけでした……」と伝えたら武藤氏は本気で悲しそうな顔をし「あぁぁ、も、申し訳ありません」と言うではありませんか。

 オレは一週間でもっとも大切な「金曜夜のメシ」というヤツがこんな形で終わるのとともに、これまでの2か月偏愛していたお店と関係が切れたことを悲しみ、とぼとぼと家路に着くのでした。帰りの電車でも、灰汁が口の中にへばりついている感覚で、唇は灰汁から出てきた脂まみれで、喉の奥には灰汁がこびりつき、胃の中でも灰汁がプカプカと浮いては「いぇーい!」なんてやっている様子を想像し、気分がどんよりするのであります。

 恐らくあの店は今後、灰汁は取ることでしょう。しかしながら、もはやオレには「灰汁まみれタンメン」のイメージしかなくなってしまい、せっかく見つけた絶品タンメンかつ、せっかく武藤氏に覚えてもらえる関係になった店を失うという実に寂しい体験をした哀愁の東京砂漠なのでありました。

 そして、一つ心に決めた(ってほどのことでもねぇけど)のは、何らかの違和感を覚えたのであれば店の人に言う、ということであります。店のことを信用しているから大丈夫、大丈夫、ということではなく、弘法も筆の誤りということはありますので、何らかの問題があるのであればそれは指摘する、ということにすべきだな、と思ったのですね。それは、普段の私達がやっている仕事でも同様のことであり、信用できる仕事相手であっても問題はちゃんと指摘し合おうよ、と今ここに仲間の皆様にお伝えする次第であります。